
“痛みが怖い”を和らげる麻酔法
“痛みが怖い”を和らげる麻酔法
体外受精 (IVF)治療の過程には, 「採卵術」と呼ばれる, 針を用いた処置が必要になります. これらの処置は短時間で終了するものではありますが, 「痛み」や「恐怖感」を伴うことがあり, 患者様には大きな心身の負担となることがあります. そこで, プロポフォールを用いた麻酔法が, 有効な選択肢となります.
プロポフォールは, 点滴から体内に投与する薬剤です. 導入直後から強力な鎮静効果を発揮する一方で, 短時間で意識が回復がする特徴があります. つまり, 採卵術の終了後にはすぐに意識を回復し, 午後から仕事に復帰することも可能です. ただし, 意識が回復していても, 判断力や反射能力が完全には戻っていない可能性があるため, 当日は重要な商談や車の運転などは避けた方が安心です.
採卵術では, 腟の壁に針を刺入するため, 局所麻酔のみでは痛みを完全に遮断できない場合があります. プロポフォールを用いた麻酔法により, 眠っている間に処置を終えることができるため, 痛みだけでなく「恐怖心」も軽減することができます.
適切なモニタリングのもとでプロポフォールを使用することで, 副作用や合併症のリスクを最小限に抑えることが可能です. もちろん, どのような薬剤にもアレルギーのリスクはゼロではありませんが, プロポフォールは比較的アレルギー反応が出にくい薬剤とされています.
これまで, 卵・大豆・ピーナッツにアレルギーのある患者様に対して, プロポフォールは禁忌とされてきました. これは, プロポフォール製剤に卵レシチンや大豆油といった油脂成分が含まれているためです.
しかしながら, 卵・大豆・ピーナッツアレルギーは, これら食品中のタンパク質に対する免疫反応によって引き起こされることが分かっており, プロポフォールに含まれる油脂には, これらのタンパク質がほとんど含まれていないことが明らかになっています.
実際, アメリカアレルギー・喘息・免疫学会 (AAAAI)は, 卵・大豆・ピーナッツに対する食物アレルギーのある患者様に対しても, プロポフォールの使用は安全であるとの見解を示しています.
「処置中の記憶がなく, 気づいたら終わっていた. 痛みを感じることがなく, とても快適だった」
「鎮静からの回復が早く, その後の体調も問題なかった. 日常生活にすぐ戻れたのがよかった」
「過去に局所麻酔で採卵を受けたが, 痛みが強くて大変だった. 今回プロポフォールを使ったら, まったく違う快適な体験だった」
このような患者様の声をしばしばいただいています.
IVFに限らず, 不快感を伴う検査や処置を受ける患者様のQOL (生活の質)向上のために, 当院ではプロポフォールを用いた麻酔法の導入を積極的に進めています.
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