ヒトの妊娠・出産とは, 実はとても難しいものです. 健康なカップルの受胎率, つまり月経あたりで妊娠・出産に至るものの確率は, 20%程度です. マントヒヒでは, その8割が妊娠・出産に至るのに対して, これはヒトの生殖の複雑さを示す事実と言えます. これに基づけば, 半年間の”妊活”で妊娠・出産に到達できないカップルは, およそ3割に及ぶことになります(健康なカップルの場合でも!). その難しさを理解したならば, 先ず焦りは禁物です.
無用な焦りは, かえってネガティブな効果をもたらしかねません. カップルのいずれかに明らかな問題があり, もしも治療可能なものと分かれば, それはむしろチャンス到来です. 排卵と月経の乱れは, 多くは薬剤の使用で克服が可能です. 男性側に原因のある場合は, 体外受精の実施の提案に先立って, 幾つかの選択肢を提案できるかも知れません. しかしながら, 初めてお会いしたカップルが, 妊娠しやすい(しにくい)のかを直ちに予見する方法は今尚ありません.
さらに, 現在のこの分野においては, 非常に多くの検査・治療の選択肢が提案されておりますが, 実はその多くには, 実施を妥当とするだけの十分なデータがありません. 溢れる情報の中から必要な情報を正しく抽出することは, 通常は容易ではありません. 私たちの考える検査と治療について, お話を聴きにご来訪いただけたなら嬉しいです. お二人のお役にたてますことを, スタッフ一同が心から願っております.